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No3  学習

このページの内容


学習

学びて 時に之を習ふ 亦よろこ)ばしからずや
朋あり 遠方より来る 亦楽しからずや
人知らずして いか)らず 亦君子ならずや

子曰学而時習之不亦説乎 有朋自遠方来不亦楽乎 人不知而不慍不亦君子乎
(論語の冒頭 学而第一)

知識を得て時に練習するのも悦ばしいじゃないか。
友があり、遠くから来てくれるのも楽しいじゃないか。
人が知ってくれなくても怒らない、それも君子じゃないか。

論語の冒頭のこの言葉は人間の学習意欲が本能であることを示しています。
「学ぶ」とはマネブ、つまり真似したい。そして「習う」とはナレル、使いなれたい。友達と見せ合いたい。有名になることが目的ではない。


学びて 時に之を習ふ 亦説(よろこ)ばしからずや朋あり 遠方より来る 亦楽しからずや人知らずして 慍(いか)らず 亦君子ならずや




虞世南・孔子廟堂碑

書風は虞世南ぐせいなん)孔子廟堂碑こうしびょうどうのひ)を参考にしました。

唐の太宗(李世民)は626年帝位につき、多くの名臣を得て、貞観の治と呼ばれる優れた国政を執行しました。
即位後間もなく国都長安の孔子廟修築を命じ、儒教宣揚を図りました。
国子監(国立大学)に孔子廟が完成すると重臣らは孔子廟再建と文教宣揚の趣旨を碑に刻して永く記念したいとし、太宗の命によって虞世南が文を書き揮毫もしました。

虞世南(558〜638)は生来、沈静寡欲で向学心に篤く、容貌は柔弱で、外形は衣にも耐えないほどであったが、中心は抗烈で、常に議論は正を持したと伝えられています。
叔父の後を継いで陳に仕え、陳が亡びて隋に仕えました。隋の煬帝からは重用されず、唐に入って虞世南より一世代若い太宗が皇太子になり皇帝になるにしたがって出世しました。太宗はことのほか彼の人柄を愛し、その博識を見こみ、政務の余暇には学問、書のことを語り合い、世南の五絶として徳行、忠直、博学、文辞、書簡を褒め称えたということです。

書は王羲之の七代目の孫、真草千字文で有名な智永に直接学んだといわれ、羲之の流れを汲んでいます。
同時代の九成宮醴泉銘を書いた歐陽詢と比較して、智均しく力敵す、しかし、外に筋骨をあらわす歐より内に剛柔を含む虞が「君子は器を蔵す」と、品格の高さで上と評価されました。


形臨から学ぶ

虞世南の書はこの孔子廟堂碑の拓本しか残っておらず、それも復刻本と合わせたものが最良の拓で、原拓の文字を選んで筆遣いなどを学びます。
その鑑識眼を持つことから臨書の勉強は始まるといってよいでしょう。

はじめての臨書のテキストとして、「孔子廟堂碑」を広げたとき、師匠の言葉は、「形を似せることからはじめて、人格を似せることに目標を置きなさい。ちなみに虞世南の人格は・・・」でした。
この言葉に若い日の私は怖気づきました。
今考え直すと、書を学ぶというのは、手本を真似することで、姿勢や呼吸が似るので、目標にするまでもなく当然人格も似る可能性はありそうです。
何を真似る(=マナブ)か、何のために真似るか、を教えてくださったのでしょうね。
そこでこんな風に考えました。

[何を真似るか]
 ・形を真似る(白い部分も黒い部分もそのバランスもそっくりに)
 ・優れているとされている手本を真似る
 ・よい師匠のよいところを真似る
[何のために真似るか]
 ・自分を変えるために真似る
 ・1枚書くことで1枚分の、成長を楽しむために真似る 


良い師

太宗皇帝は臣下に教わるということを恥じず、虞世南に王羲之の臨書の仕方を3日教えてもらって、やがて今は手本集にも入っている「温泉銘」などの名筆を残しています。王羲之の真筆を学んだ太宗の書にはたまに王羲之を超すほどの字もあるということです。(劉石菴書による)

3年習うより3年かっかて師を探せと言われています。
このときの師匠は師の選び方について、良い師とは、勉強の仕方を教えてくれる、そして、書ける人だと言われました。
字や書き方を教えてもらっても師を越えなければ文化水準は低下します。勉強の仕方を教えてもらいそれに工夫を重ねて後世に伝えましょう。
書ける人の基準は難しいので、日展審査員なら間違いないが、と小声でおっしゃいました。

幸い良い先生方にお目にかかったり教わったりする機会に恵まれますが、その都度すばらしい出会いであったと感動が残ります。
日展への批判はよく耳にしますが、書を高い水準で伝えていくために果たしている役割に関しては他に替えがたいのではないかと思います。(オリンピック同様)
そして、書を学ぶことが字をきれいに書くということにのみ効果があるのではないとも。    2001.5.19


     主な参考文献    書跡名品叢刊   唐 虞世南 孔子廟堂碑  二玄社
                 中国法書ガイド32 唐 虞世南 孔子廟堂碑  二玄社




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