古筆美手習机 16
連綿と放ちの種類
連綿と放ちの区分
9ページの連綿区分では連綿に視点がありましたが、今回は放ちの視点が加わりました。
放ちの理由は改行と含墨という必然があります。さらに続きすぎるのも美しくないので意図的に切ることもあります。書藝文化新社の「高野切第1種」にある1655文字の連綿区分データを書きなおしました。
コード 区分 データ数 小計 0g 改行含墨 72 改行
1360h 改行 64 1g 含墨 88 放ち
6541h 放ち 423 1m 次を向く 104 1k かすれ 39 2t 直接連続 320 連綿
8652j 実線連綿 398 2r 連綿線 2u 浮かせて 128 2s 省略(兼) 19 改行
行数は136 で 行の長さの平均は 1655文字÷136=12.17 です。歌は紙面の上から下まで2行で1首31文字ですので長い行は上の句17文字です。余白の割合は1−12.17÷17=0.28 と分かります。これが高野切れ第1種のこの適度な明るさの数値と言えます。
この余白は歌が3首ほど並んでいるところ以外でこまめに現れます。1行の途中に余白を作ることはしていませんので、紙面の約3割をしめる余白は改行によるものです。歌人名は2から8文字でページの下方に書かれています。歌題と詞書は歌より1.5〜2文字下がって書き始めてその高さに揃えています。歌も長文の詞書も行尾に入りきらなくて1〜2文字横にはみ出したような書き方や、行を改めて短い行もできています。含墨
含墨回数は 72+88=160 頻度は 1655÷160=10.34文字ごととなっています。1行の含墨回数は12.17÷10.34=1.18 です。各行1回余りの含墨がありますが、行頭の含墨は72で行頭の53%、行の途中の含墨は88で行の65%あります。長い行は1行に2回の含墨があり、短い行では含墨してないこともあります。行頭の高さが違えてありますので紙面の一番上に墨が固まっている印象はなく、紙面全体に散らばって見えます。
含墨の直前の文字は放ちになっていて、多くが含墨する文字への指向を見せていません。(が、その放ちでできる空間の調和に不自然さがなく意識が続いているということが感じ取れます。)これは行尾の線も同様で次の行頭へ向かった動きが筆線に表れているのはごくわずかです。部分臨書
こうして画像にして掲載する部分、つまり臨書する部分を選ぶとき、サンプルとして示しやすいものであると同時に自分に役に立ちそうなところを選びます。そして書きながらどの点を真似したいかを考えます。「なみたいまや」なら、「な」から「み」の上下動、「た」の第1画と「み」の横画との呼応(線の反る向きの組み合わせ)と絶妙の余白。「た」の縦画の反りとそこでできる字形のふくらみ。「たいまや」の動きのねばっこさ。などを通して字幅の広い字が続くときの気品の保ちかたを学ぼうとします。高野切第一種の魅力は情と気品だと思います。両方ともまだ墨量が多くて未熟です。最後の「や」の最終画の交点が3本交差になってしまってますが、原本は三角形の白が見えています。
2002.6.3.