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古筆美手習机 9

データ入力と分類


コード表
右端はデータ数




 前のページで説明したように、主に連綿の傾向を捕えることを目的にエクセルを使ってみることにしました。

データ

 まず、データは書藝文化新社「高野切 第一種」の全文字としました。初めの漢字の部分2行は外していたのですが、打ちこみ作業を始めてから、何度目かの試作・・つまり失敗ののち、長期的に使用するには全文のほうがよいかもしれないと思って、決定しました。

結果文字数・・・1655字
 

文字種

打ちこみには仮名や漢字より英数字のほうが早いので、集計作業の便も考えてコードをつけました。

文字種・・・ かな 106   漢字 27    計 133

 字母がこれだけあるのではなく、単純形の「れ」と点から書き始めている複雑形の「礼」を分けるとか「乎」をuと読むのとwoと読むのとでは分けるなどしています。「こ」を2画で書いているのと1点のように書いているのも分けました。「尓 ni」も結びと2点とに分けています。ここで全部説明してもわからないし意味もないので、いずれ手習しながら説明していきます。
 (同じ筆者の「深窓秘抄」に比べるとの文字の種類は少なく、基本的な文字が使われています。)

始筆と収筆の位置

 文字のどのあたりで連綿しているのかデータでもわかるように、それぞれの始筆と収筆の位置を、左=a、中央=b、左=cと入力しました。同じ「と」でも上はbが多いのですがたまにaがあり、下はa、b、c、全部あります。「し」や「ヽ」は原則b−bで行の右端でもcにはせず、その文字の重心を基準にしました。「ヽ」も幅のあるものはa−cと記録しています。連綿している文字が多いのでどこまでを文字、どこからを連綿線とするかなど、アナログをデジタルに記録するのは何でもそうでしょうが、厳密には分け難く、もう一度同じ作業をすれば違ったデータになるに違いありません。

一覧表

連綿

 信頼性の薄いデータでもなにも無いよりはまし、という思いで、連綿線も種類分けしました。

連綿区分
4 下の文字の第1画に上の最終画を利用している。
3 上の最終点が下の起点と一致している。
2 連綿線で続けている。
1 連綿線で続けているがかすれていて切れて見える。

5 穂先が紙から離れて全く連続していない。
6 穂先が離れているところと下の字への起点が一致している。
7 連続していない。下の字の一部が上の字の最下点より上にある。

0 行頭・行末

この分類も1と2、2と3、1と6、3と6、など判別にあいまいさが残るのはしかたありません。

まとめ

 以上で全部の文字を少なくとも、文字・上・下・連綿の4回はチェックしたことになります。
この作業に7日ほど、試作ややりなおしに2日ほどかかっています。(終日やってたわけではありませんが)
 気のついたことは、字形が分けやすい、たとえば「を」と「遠」の中間の活字体風の「を」がなくて単純形の「を」と複雑形の「遠」にはっきりと区分できる、連綿も放ち書きとの中間表現がほとんどなくておおむね2か5に分類できる、など明晰な表現であることで、これが美しさの要素のひとつと感心しました。
 作業を通して線を鑑定する力が少し育ったように思います。

2002.3.13.

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