平成15年11月4日まぐまぐプレミアム版創刊 平成16年5月18日NO.27よりまぐまぐ版で発行 ![]() |
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こんにちは。 これまでまぐまぐプレミアムで発行しておりましたが、家事都合により 毎週発行が困難になりましたので、まぐまぐで の発行に変更します。月に一度は発行したいと思いますが、 どうなるか分かりません。 この号はまぐまぐ版のサンプル号となります。 次のNO.28から、ご登録のメールアドレスに配送いたします。 バックナンバー(NO1〜NO.26)はご希望の方に直売いたします。 どうぞよろしくお願い申し上げます。 では、はじめます。 今回は三角形と逆三角形の文字です。 お楽しみください。 畑中壺竹
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下部に横に広がる要素のない逆三角形の文字です。 +*+ +*+ +*+ まず 可=口部。カ、べし 筆順は一-口-| で、楷行草とも同じ。(変体)仮名にも用いられました。 多くの法帖に出ています。
九成宮醴泉銘(欧陽詢 初唐)から
可
これと、もうひとつ下部がもっと左よりのとあります。
どちらもT字型に口がぶら下がっているようにまっすぐ立っています。
「上の寛なものは下長く」ですね。
![]() 接筆(線の交点)に隙間をつくって閉鎖空間の暗さが出ないようにしています。 同じ時代
孔子廟堂碑(虞世南 初唐)から
可
こちらは立っているという感じより口を包んでいる感じです。
九成宮の背勢と孔子廟堂の向勢の違いが見られる字ですね。
![]() 時代をさかのぼるとこの両方の先祖のような ![]() この南派とは違った感性をもつ北派では
鄭羲下碑( 鄭道昭 北魏)から
可
口が上のほうにあることなど位置関係は似ています。
安定感はありますが、この組み立ては誰が考えてもこんなものかも。
![]() これらの中間を見るような
多宝塔碑(顔真卿 中唐)から
可
筆遣いは個性的ですが造型感覚というか人柄というか、欧陽詢に
似ていると時々思います。
![]() 楷書の出来立ては、
宣示表( 鐘ヨウ 魏)から
可
隷書のなごりがあって扁平な形です。
![]() いずれも、逆三角形にきっちり収まる位置に口があると感じました。 +*+ +*+ +*+ 次に 貯の旁=宀部。チョ、たたずむ どの法帖にもないのでいつもどおり九成宮醴泉銘を真似することにします。 手本にしたのは
九成宮醴泉銘(欧陽詢)から
宇
物まね歌合戦なので癖を真似することにしました。
![]()
九成宮醴泉銘の倣書
ウ冠に丁
![]()
+*+ +*+ +*+ 次に 亨=亠部。キョウ、たてまつる、とおる これも見つからないので、手本にしたのは
九成宮醴泉銘(欧陽詢)から
享=キョウ、うける
子の頭が三角に閉鎖されているのは篆書体を思わせます。
隷書でもここはマとなっています。
行草はここで打ち直さずに続けて書きます。
![]()
九成宮醴泉銘の倣書
亨
倣書といえば、上の享の形の書写体で書くのが普通でしょうが
今の日本語スタイルにしました。
![]() 享は子の横線が長いですが、亨は鍋蓋の 横線しか延ばせないので、口とのバランスでこの長さに しました。皆さんはどのようになさいますか。 +*+ +*+ +*+ 次に 市=巾部。シ、いち 九成宮醴泉銘にありませんでした。 そう変わった形もできないと思うので倣書はしません。 ![]() 縦長にするとこの形でしょうか。
真草千字文(智永 隋)から
市
逆三角形に見えるまで
縦線をのばすときれいですね。
![]()
今度は三角形です。 +*+ +*+ +*+ 春=日部。シュン、はる 九成宮醴泉銘になくて ![]() 長大な右払いが特徴の孔子廟堂碑。三を小さくしてきれいな三角形を つくっています。この三の形にも個性があります。 これは左側をそろえています。結果、右が不ぞろいで 右側に自由な空気が感じられてのびやかな書になっています。
楽毅論(王羲之 東晋)から
春
この三は左が不ぞろいで、右払いと拮抗していますし上部の突き出しも
孔子廟堂碑に比べると短く、中央に集中した落ち着いた雰囲気をもっています。
![]()
![]()
![]() 雁塔聖教序、顔勤礼碑とも右払いより左払いが下がっていますが、 これははもっとはっきりと左払いが主になっています。 ![]() 同じ北魏、左払いが長いのは同じですが、頭を短くして 三もある程度の巾をもたせて、 巾広い安定感のある書です。正方形の枠に入れたとき 中央に近い位置に中心があります。 ![]() 「下の寛なものは上面を尖らせちぢめる」。どうせ人は下が広がるのだから そこを活かして他は巾を狭くするとスマートじゃないか、という感性です。 フォントデザインなら無理があるかもしれませんが、肉筆なら この美しさを自由に表現できると思います。
+*+ +*+ +*+ 次は 巻=卩部。ケン、カン、まく 春と同じ外形です。 法帖にあまり見当たりませんでした。
多宝塔碑(顔真卿)から
巻
卩部にある字なので中は己ではなく卩の最後を右に曲げた形です。
学校で教えるなどの時には己と教えましょう。
書写体ではこのように巳を書くことがあります。
![]() +*+ +*+ +*+ 次に 夫=大部。フ、おっと、それ まず
九成宮醴泉銘(欧陽詢)から
夫
周囲にできる7つの白が同じ大きさや角度に見えるように。
![]()
孔子廟堂碑(虞世南)から
夫
右払いを左と同じ高さまで伸ばすとこのように大きくなります。
二が小さいので足長に雄大に感じられます。
![]()
楽毅論(
左払いをカーブさせ、右払いの起点を下げて、中心を中央近くに置いています。
右上がりの横線、右下がりの人で、右に広がりを感じる形です。
![]()
雁塔聖教序(ちょ遂良 初唐)から
夫
上を尖らせることを意識した二。リズミカルに伸びやかで
整った布白です。左払いが細→太に、行書のタッチ。
これによって左右の重さが均等に近くなっています。
![]() これによく似ているのが
真草千字文(智永 隋)から
夫
こちらのほうが古い。
![]()
張猛竜碑(北魏)から
夫
左払いに重心をおいた三角形。王羲之系列とは逆で左に広がりを感じます。
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多宝塔碑(顔真卿)から
夫
頭と両足を短く、二を大きく書いて、活字に似た形。
![]() 「下の寛なものは上面を尖らせちぢめる」 +*+ +*+ +*+ 次に 太=大部。タイ、タ、ふとい、はなはだ 大に点を打つと太ですが、 造形面ではそれで満足できるのでしょうか。 古典の中で比べてみましょう。 1.九成宮醴泉銘
九成宮醴泉銘(欧陽詢)から
太
点を左払いに接して、右と同重量にしています。
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九成宮醴泉銘(欧陽詢)から
大
頭を長く突き出して当分布白に見せています。
太は書き始めから点を意識した形にしているようです。
![]() 2.孔子廟堂碑
孔子廟堂碑
点を中央において当分布白に見せています。
![]()
孔子廟堂碑(虞世南)から
大
点のない分右払いの起点を下げています。横画もやや長く書いています。
![]() 3.雁塔聖教序
雁塔聖教序(ちょ遂良)から
太
三角形構図とは考えてないようです。五弁の花のようです。
左払いの細いところに点を添えて左右バランスを均等にしています。
下辺がそろって安定感があります。
![]()
雁塔聖教序(ちょ遂良)から
大
左払いの細→太の線、右払いのカーブが当分布白を実現させています。
三角形構図ではありませんが大に点を打つと太、では
ないようです。
![]() 4.皇甫誕碑 ![]()
皇甫誕碑(欧陽詢)から
大
三角形というより花の構図に近いですね。横画がやや長いし右払いの起筆が下げてあります。
![]() 5.顔勤礼碑
顔勤礼碑(顔真卿 中唐)から
太
北派を感じる左側の大きな構図に、点は中央。
この正方形の中央に収まっています。
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顔勤礼碑(顔真卿)から
大
こちらは南派と同じ感性で書かれています。
顔法の右払いで短く処理しています。
![]() これに点をうったような太もあり、これより右払いが短い大 もあり、色々ですが、どれも四角い枠の中で整えようとしています。 規律をまもって国を維持しようとした生き方を反映しているようにも見えます。 6.張猛竜碑
張猛竜碑<(北魏)から
太
長大な左払いに点を添えて力を集中させています。
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張猛竜碑<(北魏))から
大
左払いを細→太の線にしています。
![]() 太、大ともに三角形ですね。 7.鄭羲下碑
鄭羲下碑( 鄭道昭 北魏)から
太
左右対称を意識した三角形で点も中央。
![]()
鄭羲下碑( 鄭道昭 北魏)から
大
太とあまり違いませんが、比較するとやや足が短いような。
![]() 左右対称のポイントは横線を水平に近くすることのようです。 そういえば篆書や隷書は左右対称が多いですね。活字も。 大に点を打つと太ですが、 きれいに見せるために先人はみなさん努力していました。 +*+ +*+ +*+
三角形と逆三角形、いかがでしたか。活字には活字の美しさがあり
手書きには手書きの美しさがあります。
用途にあわせて工夫したいですね。
→今日の
テスト 楽しんでね。 |
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